もう失敗しない!コーヌスクローネ製作方法〜その3〜
もう失敗しない!コーヌスクローネ製作方法〜その2〜に引き続き、いよいよ完成です!!
上顎がレジリエンツテレスコープ、下顎がコーヌスクローネです。
外冠試適後、重合に入ります。
『重合』
と聞くと、上下に分かれるフラスコに蝋義歯を埋没したのち、そこにレジンを詰めて熱湯で重合させるという簡単な方法を思い出します。
レジンは元々熱を掛けると必ず収縮します。
そのため、フラスコの中でレジンは重合収縮を起こし、床の中で気泡となって残ってしまったり、変形の原因になったりします。
保険の入れ歯を長く使用すると気泡の中へ色素が沈着したり、臭いの原因となったり、破折しやすくなってしまったりするのはこのことが要因となるからなのです。
そのような原因を解決できる方法として、イボカップシステムが開発されました。
大変手間ひまのかかる重合方法ですが、結果が素晴らしい。
総義歯において、イボカップシステムは精度を最大限発揮させますが、コーヌスクローネ、レジリエンツテレスコープにおいては、内外冠の精度にも影響するため、PVPMなど他の重合方法で製作した方が良いでしょう。
重合が終わったところです。
下顎のコーヌスクローネの歯頸部、中隔はできるだけ自然に見えるようにピンク色コンポジットを盛りました。
下顎は、内冠と外冠の分、歯冠長が高くなるので、歯が長く見えがちです。
患者様の口元を見て、どのような形が自然か、先生と技工士とよく相談をすると良いでしょう。
上顎のレジリエンツテレスコープ、本数が多いのですが、実際内冠として利用するのは、4本です。
前歯部に外冠を付与すると、ふくらみが出てしまい、前装が難しく審美面に関わる場合が多いので、キャップにした方が良いと思います。
下顎コーヌスクローネは、1本だけ失活歯ですが、そのほかは生活歯です。
失活歯のみ、コーヌス力を緩めました。
こちらも完成です!
写真も全て、詩織ちゃんが記録してくれました。
さて、模型上でゼロフィッティングさせた、技工物は、患者様のお口の中ではどのように反映されるのでしょうか。
ここからは、チェアーサイドです。
ラボでは、先生や衛生士が内冠の位置を間違えないように、歯の番号をつけておくと間違わずにセットすることができます。
患者様のご希望により、歯の色はできるだけ白くとの事でしたので、VITAのシェードで、A1に決めました。
まずは、内冠を試適します。
すでに、前回まで何度もチェックをし合っているので、ここで入らない、合わないということはありません。
上顎のレジリエンツテレスコープも同様に試適し、この時点でもう一度、患者様と審美性のチェックを行います。
ここで、お互い確認をしたらいよいよセットです。
外冠の内面にたっぷりとワセリンを塗布します。
衛生士とどの歯からセットをするか、打ち合わせをしましょう。
セメントは、私はグラスアイオノマーを使っています。
支台歯が多い場合は、バランスを保ちながら分けてセットを行っても大丈夫です。
ここで最も大切な事は、内冠をセットした後、セメントが固まらないうちに外冠も同時にセットする事。
セメントが固まってから、外感をセットすると浮き上がってしまいます。
そして、セメントの硬化を待ち、外冠を外し、セメントアップです。
上顎も同じようにセットをしますが、上顎はレジリエンツテレスコープのため、セメント硬化後に0.3ミリの箔を外し、義歯の沈み込みをさせます。
レジリエンツテレスコープの詳しいセット方法はこちらをご覧ください。
セットした後の写真です。
今回、これだけの大きなケースにも関わらず、バイトにおいても全て無調整でした。
この時点で、咬合紙を噛んで全体のチェックを行いましたが、全て均等にかみ合っていたのです。
詩織ちゃんとの連携により、口腔内の状態と、咬合器の状態が一致していたのだと思います。
患者様は、アメリカのドクターから全て抜いて総義歯かインプラントという選択肢を迫られていましたが、こうして全ての歯を利用して、完成を迎えることができて、本当に嬉しいとおっしゃいました。
また、技工士である詩織ちゃんがいつも、立ち会ってくれていたのが特別感があり頼もしくもあり嬉しかったともおっしゃってくださいました。
3ヶ月間、こちらの患者様に集中させていただいた結果は素晴らしいものとなりました。
「日本に帰国して、診療を受けて本当に良かったです。日本で治療を受けることを承諾してくれた夫にも感謝です」
とのことでした☆彡
患者様の笑顔を見ることが、私たち歯科医師、歯科技工士の喜びです。
それほど患者様の笑顔は素敵でした!
ずっと長く使っていただけるように、見守って参りたいと思います。
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