コバルトクロム合金によるリーゲルテレスコープ

リーゲルテレスコープは、テレスコープシステムというドイツで開発された義歯の一つです。

リーゲルテレスコープは1948年、Tuebingen大学のProf.Dr.Strackと技工マイスターE.Schlaichによって、考案されました。その後、Prof.Dr.Strackの助手をしていたDr.E.Koerber, Dr.M.Hofmannによって改良が加えられました。

弊社顧問の稲葉繁先生は、1978年 Tuebingen大学に客員教授として留学をしていた際にDr.E.Koerber(Tuebingen大学教授)より直接リーゲルテレスコープの治療方法、製作方法を学びました。

テレスコープシステムの中でも特にドイツ的で精密さが要求され、マイスター試験に必ず出題されるのがリーゲルテレスコープです。

当時はすべてゴールドで製作されていましたが、現在ドイツでは、ほとんどすべてが、コバルトクロム合金をミリングや放電加工機を用いて加工したものです。

コバルトクロム合金の魅力のひとつは、軽さ。

例えば、上顎にテレスコープシステムを行う際に、支える歯の本数が少なく、失活歯であることがほとんどです。

その際に、ゴールドを用いると、その重みに耐えられない場合もあります。

コバルトクロム合金の軽さであれば、残っている歯に負担がかからないということが、一つ目の魅力。

二つ目の魅力は、コバルトクロム合金は、金属が薄くとも、頑丈だということです。

コバルトクロム合金ならではの、舌感は非常に魅力的です。

金属が薄い分、歯を削る量も少なくすみます。

そして、厚みがとれる分、テレスコープ義歯の外冠部の前装の色味をより一層美しく見せることが可能となります。

三つ目の魅力は、ゴールドに比べてコバルトクロム合金の方が安価であること。

ゴールドの高騰は皆さんご存知の通り。安くなることは今後ありえません。

これまで、テレスコープシステムを患者さまに提供させていただく際、ゴールドがあまりにも高いため、技工料金を削ってきました。

200時間以上もかけて製作する技工料金を削ることで、昨今問題となっている、技工士離れにも繋がってしまいます。

歯科医院にとっても、金属代と技工料金を引いたら、ほとんど利益がありませんでした。

それに比べて、コバルトクロム合金は安定した価格帯のため、技工料金を下げることなく、患者さまへ技術の提供ができます。

以上のような、三つの大きな魅力がコバルトクロム合金にあると言えるでしょう。

今回のリーゲルテレスコープを製作してくれたのは、Weber dental labor 小泉詩織さん。

製作にあたり、大変だったこと、工夫したこと、製作時間について聞いてみました。

* 大変だったこと

リーゲルは基本全てが大変ですが、強いて言えばレバーのちょうど良いきつさの調整
(レバー調整してると爪を酷使しすぎて爪が変形することもあります。笑)

Co-Crの作業 キャスト、適合、研磨、ろう着、フルの前装など。

ほとんどすべてですね!

* 工夫したこと

Waxやレジンをキャスト前に変形させずに、金属に置き換える事。

患者さまの審美に関する要望を最大限取り入れたこと。

* 製作時間

ざっと計算したところ200時間くらいでしたが、多分250時間くらいかかっているかと思います。

コバルトクロム合金は、扱いがとても難しい金属です。
すべてがオーダーメイドのため、非常に高い技術と手間暇がかかります。

今回のようなリーゲルテレスコープは、患者さまからいただく費用は、300万~400万(複雑なケースですと、それ以上かかります。)

その費用を、技工費用と治療費、半分ずつ分けております。

費用はかかりますが、患者さまにはそれだけの価値を感じていただけるものと思い、ご提供させていただいております。

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