『顎関節症の臨床〜咬合からのアプローチ』レポート石川太一

レポート/Weber Dental Labor Gmbh 歯科技工士 石川太一

2017年3月19日に行われました、IPSGセミナー「顎関節症の臨床」の午後の部についてレポートさせていただきます。

まず、IPSG副会長である岩田光司先生より、日本顎関節学会における顎関節症治療の方向性が示されました。

その後、本日の講演の柱となるテーマを3つに分類し、その1つ目の「クローズドロックの解除法」についてドップラー聴診器を用いてクリック音を聞き、開口量などを診断した後、ケルバーの顎関節機能試験を行い、マニュピレーションする様子を動画にて説明していただきました。

その後、詳細な写真を使っての顎関節のしくみを再度確認することで、口腔周囲筋などを含めた顎関節を大きく俯瞰して理解することができるようになりました。

その流れの中で、2つ目のテーマである、「顎口腔系の梃子作用」について触れられました。

魚釣りをイメージできる3級の梃子作用。
効率は悪いですが、咬合では理想とされています。

次にシーソーをイメージできる1級の梃子作用。
臼歯部の干渉により、顎関節に悪影響を及ぼします。

最後に一輪車をイメージできる2級の梃子作用
これも側方運動時の平衡側の干渉によって、顎関節を変位させます。

そして3つ目のテーマである「咬合器を用いての咬合診断」についての重要性を講義していただきました。

カボプロター咬合器を用い、フェイスボウトランスファーによる咬合器付着を必ず行い、中心位を咬合採得します。

その後、顎関節症の診断から、治療、治癒にいたるまでの過程と方法を、様々な資料を使用し説明していただきました。

そしてこれまで解説していただいた事を踏まえた上で、実際の臨床症例に照らし合わせながら、治療工程を解説されました。

60才代男性の顎関節症のケースでは、顔の左右差や体の歪みを確認した後、画像診断、触診、開口量、雑音、開閉方向などを精査します。

その後、顎機能計測機アルカスディグマによるEPAテストをします。

模型を採り、フェイスボウトランスファーの後、カンペル平面にて咬合器付着します。

この段階で多くのことが分かってきます。

各歯列のラインを描記し、審美的な状況も詳しくわかり、歯列弓の特徴が判明します。

その他にも、側方運動時におこる梃子作用がありました。

中心位と中心咬合位のズレもあります。

このような種々の検査によりまず一番重要なのは、咬合の安定であることが判明しました。

臼歯部のテンポラリーにより、咬合の安定を図った後、補綴治療を実施します。

それにより顎関節は安定し、中心位のズレも少なくなりました。

次に、50才代女性のケースです。
レジリエンツテレスコープにより、安定した咬合接触と誘導を欠損治療で作って、顎関節を守る方法をとったケースが紹介されました。

スプリントによる咬合挙上、骨隆起の除去後、上下同時印象しフェイスボウトランスファーします。

アンテリアガイダンス、臼歯部の支持を作り、人工歯により顎関節を安定させていくというレジリエンツテレスコープの症例でした。

このような様々な症例を、根本的な原因を究明する所から始まり、体系化されたIPSGの理論によって多岐にわたるアプローチで治療していく過程は、部分的な治療にとどまらない、まさに包括的な歯科医療を行う上で、欠かせないものであると再認識することができました。

最後に質疑応答の時間が設けられ、稲葉繁先生と岩田光司先生による解説の後、閉会となりました。

次回は、『顎関節症ライブ実習コース』が開催されます。

▼過去のセミナーのレポート記事はこちら
https://ipsg.ne.jp/gakuliveseminar201604-report1/

『顎関節症ライブ実習コース』は実際に顎関節症で困ってらっしゃる患者様をお呼びし、問診から、治療まですべて先生方の目の前で、デモンストレーションさせていただきます。

KaVo社のPROTAR evo7咬合器、フェイスボー、ARCUSdigma2下顎運動測定器、を用いた咬合診断システム化により、確実な原因を探すことができます。

咬合治療による顎関節治療を先生方の目の前で実習させていただくコースは、IPSGの他にありません。

顎関節症を治療するステップを、ひとつずつ、わかりやすくご説明させていただきますので、ぜひご参加いただければと思います。

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