咬合調整の基本原則〜将棋の駒理論〜

こんにちは。

Weber dental labor 稲葉由里子です。

「咬合調整ってどこまで行えばいいの?」

稲葉繁先生が、当時日本歯科大学3年生に教えていた『咬合』のテキストに基づいて、その答えに数回に渡りお伝えしたいと思います♪

第一回目は『咬合調整の基本原則〜将棋の駒理論〜』

海外からの咬合理論が大半を占めている中、日本的な将棋の駒で世界に伝えたいと思い、稲葉先生が考えた顎運動の理想的な形態を表す理論です。

いつまでも行うべきではなく、咬合調整修了の目安があります。

・筋の緊張が緩和

・咬合音が高く澄んだ音となる

・中心滑走が無くなるか、あったとしてもスムーズになる

・咬合時、歯牙の動揺がないこと

また、患者様の自覚症状として

・症状の軽快

・顎を特別意識せずに自由に顎運動ができる

ということを、目安にしていただければ良いと思います。

【咬合調整の基本原則】

これから、お伝えする事はとてもシンプルで当たり前のように感じるかもしれませんが、実際の臨床において守られていない事が多くあるように思います。

1.不正なテコ現象の支点となるような咬合接触を取り除く。

この時、身につけておいていただきたいのが、『将棋の駒理論』

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海外からの咬合理論が大半を占めている中、日本的な将棋の駒で世界に伝え、また当時大学3年生ができるだけわかりやすく理解できるように考えた理論であり、顎運動の理想的な形態を表すものです。

顎の運動は回転Rotationと滑走Translationに分かれており、中心位で開口した時は関節内で下顎は回転します。

さらに開口して行くと下顎は滑走を始め関節内の上壁に沿って前方に滑走し、さらに大きく開口して最大開口します。

前方運動でも同様に、中心咬合位で最大面積で接触していた歯は前方運動すると関節部では上壁に沿って前方へ滑走していきます。

その時前方の歯列では前歯が誘導して臼歯は離開し、臼歯の側方力を防止します。
側方運動では片側の下顎頭は回転し、その反対側は滑走します。

回転側(作業側)では犬歯が誘導し、その他の歯は離開します。
これを『犬歯誘導』といいます。

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この時下顎骨を上方より投影して見ますと、後方は両側の関節と両側犬歯と前歯の形態で成す外形は五角形をつくります。
これはあたかも『将棋の駒』に良く似ている五角形です。

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五角形を分解してみると両側の関節を底辺として三角が三つに分解することができます。

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下顎運動はこの三角の合成で行なわれており、下顎頭を底辺として三角形の移動でスムーズに行なわれるのが理想的な形態となります。

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この三角は面積が大きければ大きい程安定しており、下顎運動をスムーズに行なわれることになります。

私達が座っている、治療用のチェアー、技工用チェアーを思い出してください。

5つの足があると思います。

将棋の駒と同じ5角形であることから、安定を保っているのです(^_^)

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もしこの時、下顎の運動中に臼歯が接触すると、三角は面積を縮小し、梃子現象が誘導されます。

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下顎頭は不安定となり、顎関節もそれに伴い不安定となり、時として関節円板の偏位を招くことがあります。

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このような症状は、しばしば顎関節症の原因ともなるので、私達歯科医師、歯科技工士は咬合器上ですぐに気付き、原因を取り除く必要があるでしょう。

これらの症状を防止するための理論として「五角形の理論」いわゆる『将棋の駒理論』と名付けました。

次回は、咬頭嵌合時に臼歯が歯軸方向に力がしっかり加わるために必要な知識、ABCコンタクトについてお伝えしたいと思います。

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