「顎関節症ライブ実習コース」2018年〜後半〜

こんにちは。

Weber dental labor 稲葉由里子です。

「顎関節症ライブ実習コース」〜前半〜に引き続き、後半をお届けしたいと思います。

今回の顎関節症ライブ実習コースは、咬合からのアプローチによる診査診断が非常に重要となります。

顎関節症治療は、咬合の知識の集大成と言っても過言ではないでしょう。

私たち、歯科医師、歯科技工士が、中心位と中心咬合位のズレに気づくことができるというのは、患者様の治療を行う上で、大きなキーポイントになると思います。

チェックバイトはなぜ必要か。

咬合診断の際、顆路角を調整するために行われます。

顆路とは側頭骨の関節窩に対して、下顎頭(顆頭)が関節円板を介して、顎が動いていく状態のことを言います。

その中で、下顎が前方に動いていく道を『矢状顆路角』といいます。

側方運動では、平衡側で矢状顆路角の前内下方を通ります。

これを『側方顆路角』といいます。

手順としては、咬合器を調整するために、側方チェックバイトを採ります。

その際、パラフィンワックスを2枚用い、下顎の側方位で犬歯の先端まで誘導し、記録を採ります。

平衡側の下顎頭が前内下方に誘導される位置を記録し、それを咬合器に再現させます。

前方チェックバイトは、側方チェックバイトによりフィッシャー角の分だけ角度が増すため(約5度)打ち消されてしまうため、側方顆路角により、矢状顆路角を設定します。

ちなみに、矢状顆路角と側方顆路角のなす角度を『フィッシャー角』と呼んでいます。

フィッシャーアングルは5度です。

さらに、これを水平面に投影した角度を『ベネット角』といいます。

その角度はギージーによれば、13.9度でありますが、ランディーンによれば、下顎の側方運動開始から4ミリのところで、サイドシフトとよばれる動きが現れます。(これをイミディエートサイドシフトと呼んでいます)

最初の4ミリを超えると、差がなくなり、その平均値は7度で個人差はみられません。側方顆路角の平均値は7度と覚えておくだけでも、大きな助けとなります。

この部分は大変理解するのが難しいと思いますが、次回開催される、5/13(日)咬合治療の臨床ベーシック5/27(日)咬合治療の臨床アドバンスを受講いただければと思います。(^^)

フェイスボウトランスファーは歯科治療の際、診断と治療の基本になる作業です。

しかし、現実に一般の臨床で、この作業を行っている歯科医師はどの位いるでしょうか?
おそらく10%に満たないのではないでしょうか?

では何故フェイスボウトランスファーをしなければならないのでしょうか・・・

人間の体は左右前後にバランスが取られていなければなりません。

体の不均衡が生じると様々な所に歪みを生じ、骨格筋のアンバランスを引き起こします。

その結果、肩こり、腰痛、頭痛等アンバランスの結果により生じます。

人の体は頭から踵まで一本の軸が通っていなければなりません。

また踵から膝、腰肩、瞳孔線まで体の軸に対し直交している事が理想的です。

その際、我々の領域である歯列も同様に体と直交していなければ成りません。

体の軸から頭頂まで伸ばした頭蓋の軸を基準にした歯科医療が必要です。

この作業に必要なものがフェイスボウトランスファーです。

咬合器に模型を付着し、顆路角の調整を行い咬合器上で咬合調整を行いました。

下顎中切歯の切縁、左右下顎第二大臼歯遠心頬側咬頭を結んだ3点で作られる面が「咬合平面」と呼ばれ、カンペル平面(鼻下点から耳珠上縁を結んだライン)と平行になります。

ここで、スピーの湾曲が強いかどうかを診断することも大切です。

模型診断は、舌側、後方から直視して診断できるのもポイントです。

実際患者様の口腔内を後ろから見ることなんてできません。

そして、咬合器上で咬合調整を行いました。

側方運動時の作業側の干渉が両側共に見られました。

それにより、反対側の犬歯と顎関節でテコ作用が発生し、顎関節がしっかりと円板と密着できずに不安定な状態で口を開いていました。

咬合調整は、咬合紙の色がついた高い部位を削ることではありません。

高い部位の通り道を作ることが大切です。

高い部位を削ってしまったら、メリハリのない、真っ平らな咬合面になってしまいます。

岩田先生によるマニピュレーション。

開口量は、38ミリから47ミリに変化しました。

カボ、アルクスディグマⅡによる顎機能検査は、稲葉歯科医院の小西先生にデモンストレーションをしてもらいました。

その後、岩田先生が模型で咬合調整した部位を口腔内でも再現し、治療を終えました。

結果、開口方向がまっすぐとなり、右の顎関節の動きもスムーズに変わりました。

岩田先生の、わかりやすい解説に、受講生も熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

左側は、治療前なのですが、側方運動時に一度後ろに下がって動いていましたが、治療後は、スムーズに動いています。

EPAテスト、中心位も見事に一致しています。

このように、患者様のお口の中は、修復物もほとんどなく、歯並びも綺麗です。

しかし、長年顎の痛みで悩んでいらっしゃいました。

咬合による細かな診査診断により、原因を見つけることができましたが、もし何もせずに様子を見ていたら一生顎の痛みに悩まされていたと思います。

2日間の実習を終え、無事に患者様の顎関節症は改善されました。

後日、患者様より感想をいただきました。

▼今日はありがとうございます。感想があったのですが、言い忘れたので、備忘録的にメモします。最後に耳の横と鼻で固定する装置を装着したときに見える景色が、治療前は少し右肩上がりだったのですが、治療後に装着した際は、真っ直ぐ水平に見えました。これも、咬合が影響してるのでしょうか?

▼原因説明も簡潔で分かりやすく、治療もあっさりと終わって、とても良かったです。数日前からの腰痛も治療後には、緩和されててビックリしています!

▼芸能人だけでなく、一般人も歯が大事。原因究明(結局、てこの原理に起因)から、歯を少し削っただけで、こんなにも違うのかと。

そして、先生方からも沢山の感想をいただきましたので、一部ご紹介させていただきます!

たった2日で顎関節症の患者さんが治ったことにとても驚いた。治療過程のすべてに理論に基いた方法が使われており、とてもわかりやすく楽しく受講できた。ありがとうございました。DVD買います。

毎回セミナーに参加させて勉強させて頂いていますが実際に患者様を前にして進んでいくセミナーは実に学ぶことが多く、患者様とのやりとり、細かいところまでライブで見れ、知れ、学べることはとても楽しいですし、イメージしやすく、今まで学んだ内容が点と点がつながっていくようでした。すばらしいセミナーです。プラス土曜セミナーで再度KaVoの咬合器の使用、特徴のセミナーを加えて下さって、再確認できとてもラッキーでした。

顎関節症を抱える患者さんは多くいると思いますが、その患者さんに対して力になれるような知識と技術を身に付けたいと思います。

患者さんの声を聞く機会が少ないので、新鮮でした。開口量で顎関節の状態が予想できるということが勉強になりました。

顎関節、咬合は咬調のみですべての全身のバランスに影響を与えていることが分かりました。咬合は中心咬合位でしていたので、今後は中心位と咬合器をしたいと思いました。

今回のライブには咬合治療のエッセンスがすべて入っていると思う。DVDを購入して復習しようと思う。

「顎関節症は咬合は関与しない」一般的には言われていますが、このセミナーを受講するといかに「咬合からのアプローチ」が大切かを目の当たりにすることができる唯一無二のセミナーかと思います。このコース(基礎、ライブ)は何回か再受講しましたが、その過程に少しずつですが、理解が深まってきました。今回も新たな発見があり、とても勉強になりました。有難うございました。

・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。

ご参加いただいた先生方、協力してくださった患者様、2日間一生懸命治療に取り組んでくださった岩田先生、稲葉先生、スタッフの皆様のおかげで素晴らしいセミナーを開催することができました。

本当にありがとうございました!!

もどる